~親子でできる!楽しく続けられる家庭内トレーニング~
はじめに
コミュニケーション能力は「話す力」や「聞く力」だけではありません。自分の気持ちを伝える勇気、相手の気持ちに気づく想像力、言葉の選び方や表情、タイミングなど、さまざまな力が合わさって育っていきます。特に小学校中学年の時期は、人との関わりがより複雑になる時期。だからこそ、家庭で「練習の場」をたくさん設けることが、自然なコミュニケーション力の土台作りに繋がります。
ここでは、親子で楽しみながら実践できる10個の方法をご紹介します。
1.「10秒インタビューごっこ」
内容
子どもが“インタビュアー”となって、親に10秒で質問→答えを聞くという短いインタビューを繰り返す遊び。翌日は役割交代します。
ねらい
- 質問力(的確でわかりやすい質問を作る力)
- 要点をまとめる力
- 相手の話を聞く集中力
やり方
- 時間を1回10秒に設定(長くても15秒)。
- 「最近楽しかったことは?」「子どものころのあだ名は?」「おいしかった料理は?」など、どんなテーマでもOK。
- インタビューが終わったら「ありがとう」のあいさつを必ずする。
アドバイス
・質問を紙に書いておいてもOK。
・子どもが質問につまったら、親がヒントを出してあげると安心して続けられます。
2.「家族会議・子ども議長」
内容
子どもを“議長”にして、家族で簡単な議題について話し合います。例えば「今週末の予定」「家族のルールをひとつ決めよう」など。
ねらい
- 自分の意見を整理して話す力
- 人の意見を聞いて判断する力
- 話し合いの進め方を学ぶ
やり方
- 子どもが議長となり、会議をスタート。
- 事前に議題を決め、家族で意見を出し合う。
- 最後に子どもが「まとめ」と「決定」を述べる。
アドバイス
・大人が子どもの議長ぶりに口を出しすぎないことが大切。
・時間は10~15分程度で。長くなりすぎないように。
3.「おしゃべりおにごっこ」
内容
普通のおにごっこにルールを加えます。「鬼に捕まらないためには、鬼に質問をする」など、会話を混ぜながら逃げる遊びです。
ねらい
- とっさに言葉を出す力
- ユーモアと発想力
- ゲームの中で人と関わる柔軟性
やり方
- 鬼が近づいてきたら、捕まる前に質問(例:「好きな色は?」「今日のお昼何食べた?」)をすると一時停止できる。
- 鬼は答えたらまた追いかけ開始。
アドバイス
・室内でできる小さなスペース用にアレンジも可能(ぬいぐるみを使うなど)。
4.「気持ちのジェスチャーゲーム」
内容
「うれしい」「悔しい」「不安」「ドキドキ」など、気持ちをジェスチャーで表現し、親が当てるゲーム。
ねらい
- 非言語の表現力
- 感情を理解し、整理する力
- 相手の表情や仕草に注目する力
やり方
- 紙にいろいろな気持ちを書いて箱に入れる。
- 子どもが1枚引いて、表現する。
- 親が何の感情かを当てる。
アドバイス
・終わったら「そのときの気持ちになったとき、どんなことを考える?」と聞くとさらに深まる。
5.「感謝シャッフル」
内容
家族全員で、1日1回「ありがとう」を紙に書いて箱に入れ、夜にみんなで読み上げる。誰のことかは書かずに読み上げます。
ねらい
- 相手に感謝を伝える習慣
- 言葉で人をあたためる経験
- 自己肯定感の向上
やり方
- 紙に「今日ありがとうと思ったこと」を1文で書く。
- 名前は書かず、箱に入れる。
- 夜にくじ引きのように引いて読み、誰のことかを考える。
アドバイス
・毎日できなくてもOK。週に2~3回でも十分効果があります。
6.「まねっこインタビュー」
内容
親が言った言葉や話し方をまねして、その通りに子どもが繰り返す遊び。
ねらい
- 言葉のイントネーションやリズムを学ぶ
- 相手の話し方をよく観察する力
- 楽しみながらのスピーキング練習
やり方
- 親が「今日は雨が降ったから…」など、短い文を話す。
- 子どもが同じ言い方でまねする。
- 少しずつ内容を長く、複雑にしていく。
アドバイス
・ニュースキャスター風、アニメ声風など、声のスタイルを変えても楽しめます。
7.「1日1ミニ発表」
内容
毎日、子どもが1分以内で「今日の発見」「思ったこと」を発表する時間を作ります。
ねらい
- 自分の言葉で伝える力
- 話の構成力
- 話すことへの抵抗をなくす
やり方
- ごはんの前やお風呂のあとなど、決まった時間を設ける。
- 発表のあとは拍手!
- 質問タイムもあると◎
アドバイス
・「間違ってもいい」「うまく話せなくてもいい」という雰囲気作りが大切。
8.「好きなものプレゼン」
内容
子どもが自分の「好きなもの」について熱く語るプレゼンタイム。週に1回程度でもOK。
ねらい
- 好きを伝える力
- 自分に自信をもつ経験
- 話し手と聞き手の役割を理解する
やり方
- テーマを決めて(例:好きなキャラクター、好きな本など)
- 時間は3分以内が目安。
- 親は聞き役として質問やリアクションをする。
アドバイス
・時には「プレゼン大会」をして親も参加すると盛り上がります。
9.「つぎは何て言う?」
内容
会話の途中を止めて、「次にどんな言葉を言うといいと思う?」と子どもに考えさせる。
ねらい
- 会話の流れを理解する力
- 適切な言葉選びの力
- 空気を読むトレーニング
やり方
- 会話を途中で止める(例:「○○くん、明日からキャンプだって」「え、そうなんだ…」)
- 「このあとはどんな返事をしたらいいと思う?」と問いかける。
- 子どもが考えた返答について一緒に考察。
アドバイス
・「絶対に正しい答え」はないことを伝え、自由に発想できるようにする。
10.「想像セリフごっこ」
内容
絵本や写真、テレビのワンシーンなどを見て、「この人は今、何を考えていると思う?」とセリフを想像する遊び。
ねらい
- 想像力と共感力の育成
- セリフを考える創造性
- 他者の視点で考える習慣
やり方
- 人物が写っている写真などを使う。
- 「この子、今なんて言いそう?」と問いかけ。
- 親子で1人1つずつセリフを出し合う。
アドバイス
・ときどき「この子の気持ちを言葉で言うと?」というバージョンにしても効果的です。
おわりに
これらのトレーニングは、「遊びのように学べる」ことを大切にしています。子どもは「やらされる」と感じると、どんなに良い内容でも続きません。親子で笑いながら、気楽に、でも丁寧に言葉と向き合うこと。それが何よりの力になります。
日々の積み重ねが、子どもの心に「話すって楽しい」「人と関わるって心地いい」という感覚を残してくれることでしょう。