◆はじめに:「ちゃんとできない」は親の悩みの定番
小学生になると、親の「しつけ」に関する悩みも変わってきます。たとえばこんな声が多く聞かれます。
- 「朝、なかなか起きられない…」
- 「忘れ物が多い、宿題をしない」
- 「だらしない。注意しても聞かない」
こうした生活習慣やマナーに関する悩みは、「ちゃんとしなさい!」「もう◯年生でしょ!」とつい怒りたくなってしまいがち。でも、実は“仕組み”や“関わり方”を変えるだけで、ぐっと改善することが多いのです。
この章では、怒らずに・楽しみながら・自然と身につくしつけ&生活習慣づくりの工夫を、家庭での具体例を交えてご紹介します。
◆1. 習慣づけの基本は「仕組みづくり」から
●「やる気」よりも「やれる仕組み」
子どもに何かを身につけさせたいとき、「やる気」を求めるのではなく、自然と“やってしまう”仕組みをつくるのがポイントです。
《実践例:習慣化カレンダー》
準備:白紙のカレンダー or 手作り表、シール、色ペンなど
やり方:
- 「朝ごはん前に顔を洗う」「帰ったらランドセルを片付ける」など、身につけたい行動を1〜3個に絞る
- できた日は、子どもが好きなシールを貼る or 色を塗る
- 週末に「できた回数」を親子で見て振り返り、「〇日できたね!」と成果を喜び合う
ポイントは「完璧を求めない」「失敗しても責めない」「記録を親が管理しない」こと。自分でやれた!という達成感が、次の行動につながります。
◆2. 片づけ・身支度の自立を促す「見える化」工夫
●忘れ物・だらしなさは「意識」の問題ではなく「整理」の問題
「また体操服忘れてるよ!」「明日の準備したの!?」とつい叱ってしまうこと、ありますよね。でも、脳の発達段階から言えば、小学生が“毎日忘れずに準備を整える”のはまだまだ難しい力。
だからこそ、「自分で管理できる仕組み」を一緒に作っていくのが効果的です。
《実践例:持ち物チェック表》
作り方:
- A4サイズの紙に、「ランドセルの中に入れるもの」「持っていくもの」をリスト化
- イラストを添えて「見てわかる」ようにする(チェックボックス付き)
- できれば、子ども自身が書いたり、色を塗ったりして「自分仕様」にする
- 毎朝 or 前夜に確認。慣れたらチェック表なしでもできるようにしていく
こうした「見える支援」は、ADHD傾向のある子や注意が散りやすい子にも非常に効果があります。
◆3. 時間を守れない・だらだらする子に効果的な“視覚タイマー”
●「あと5分!」が分かると子どもは動ける
小学生は、時計の“時間の感覚”がまだぼんやりしています。たとえば「あと5分で出かけるよ」と言われても、その5分がどれくらいなのか、実感しづらいのです。
《実践例:キッチンタイマー or 視覚タイマーの活用》
- 宿題:15分タイマーをかけて「集中タイム」→終わったら3分休憩
- ゲームやテレビ:30分タイマーをセット→終了したら自分で止める
- 朝の支度:「出発までの残り時間」をタイマーで見えるようにする
※市販の「視覚タイマー(残り時間が色で見える)」や、スマホアプリも便利です。
時間を“視覚化”することで、「区切る」「切り替える」「待つ」力が自然と育っていきます。
◆4. 「忘れ物」「うっかり」に効く“リマインドワード”づくり
●親の言い方を「命令型」から「気づかせ型」に変えるだけで効果倍増
「宿題やったの!?」「明日の準備した!?」
これらの声かけを、子どもがうるさく感じて拒否することも多くあります。
そこで、家庭だけの「合言葉=リマインドワード」を作っておくと、親子の関係もスムーズになります。
《実践例:リマインドワード》
- 「ランドセルさん元気?」=明日の準備できてる?
- 「ふろスイッチONした?」=お風呂準備した?
- 「夜のチェックタイムだよ!」=片づけ・歯磨き・翌日準備などを一括で確認する時間
楽しい言葉にすることで、言われる側のストレスも減り、自分で気づくきっかけになります。
◆5. ガミガミ言わずに“自然とマナーが身につく”しつけアイデア
●ルールは「守らせるもの」ではなく「一緒に決めるもの」
たとえば、食事中に立ち歩いたり、お菓子ばかり食べたがったり…そんな“ちょっとしたマナー違反”も、小学生にはよくあること。
でも、「何度言っても直らない」ことには、親が一方的に決めたルールであるケースが多いのです。
《実践例:マイルールを一緒に決めよう》
手順:
- まず親が「困っていること」を正直に伝える
- 子どもの気持ちを聞く(「なんでそうしちゃうの?」)
- 解決策を一緒に考える(「じゃあどうすればいいかな?」)
- 「おうちルール」として紙に書いて貼っておく
【例】
・ごはん中は立たない → 「どうしても立ちたくなったら“立ちますボタン”を押す」(仮想ルール)
・お菓子は1日2つまで → 「今日はどれを食べるか、朝に決めて箱に入れておく」
自分が関わって作ったルールは、子どもも守りやすくなります。
◆6. 自己管理力を育てる「家の中での役割」
●家庭の中で“自分にできることがある”という実感が、生活力につながる
しつけ=注意すること、ではなく、「行動で育てること」こそが本質です。そのためには、“家庭の中の役割”を与えていくのが一番の近道。
《実践例:家庭係をつくろう》
- 毎週交代で「おはよう係」「食卓並べ係」「ゴミ集め係」などを設定
- 子どもが名前やマークを書いた係札を作る
- 終わったらシールを貼ったり、週末に「表彰」してもOK
「自分のことを自分でできる」→「家族のために何かができる」へとステップアップすると、自信と責任感が自然に育ちます。
◆7. 最後に:「しつけ」は“できるようになる”過程を大切に
親が「ちゃんとしつけなきゃ!」と力を入れるほど、子どもは逆に反発したりプレッシャーを感じたりしてしまうこともあります。
大切なのは、「今はできなくてもいい」「でも一緒に育てていこうね」という姿勢。
失敗を責めるのではなく、「どうすればうまくいくか」を一緒に考えるスタンスが、親子の信頼を深め、生活習慣の定着にもつながります。
◆まとめ:生活習慣の悩みに効く!家庭でできる7つの工夫
- 習慣化カレンダーで楽しみながら継続
- 持ち物チェック表で“自分でできる”仕組み
- 視覚タイマーで時間感覚を育てる
- 合言葉でやることをリマインド
- ルールは一緒に決めて“守りたくなる”ものに
- 家庭係で自立心と責任感を育てる
- 完璧より「成長の途中」を大切に
次回は【第4章】情緒・感情コントロールの悩みに関する親子実践例をお届けします。